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【ベアドッグ繁殖プロジェクト】 タマと過ごした最後の夜 ~第1子誕生~

今日で子犬たちが産まれて7日目です。

私の目の前には藁納屋でお腹一杯にお乳を飲んだ子犬たちがタマの周りですやすやと眠っています。温かな藁のベッドで満足げな顔で眠る彼らの姿は天使のようで、この至福の空間はまるで天国です。

180406 heaven(Rela,Shun,Dan,San,Elf,Malu)

しかし、出産直前に今からは想像もできないような緊張した空気がこの小屋に漂いました。

私は、産後の子犬の管理がしやすい産箱を小屋の中に準備しました。そして、安心して出産できるようにタマと2ヶ月前からここに暮らしてきました。タマも小屋での暮らしや産箱にも充分になれたので、このまま産箱で出産の時を迎えるはずでした。

180331 Before birth

3月29日、タマには体温低下、排泄頻度の上昇、息切れ、食欲不振、巣作り行動をする等、出産間近の行動が出揃いました。こうなってくると、破水や陣痛も間近で24時間以内に出産があると言われています。

しかし、それ以降はなかなか進展がなく、時間だけがすぎていきました。
結局、2日目を過ぎても様子がかわりません。私もその間ほとんど寝ていなかったので、だんだん疲れと焦りがでてきていました。

180329.jpg

3月31日14:00頃、タマの様子が急変し、産箱から出たそうな素振りをしきりに見せます。しかし、私は「産箱で産んで欲しい」という気持ちからタマに「ここで産むんだよ、ここで破水していいんだよ」と撫でながら、産箱に滞在させていました。

それから2時間が経過した16:00頃、タマの表情がさらに不安げになり、とても外に出たがったので、一度、屋外に出すことにしました。そうしたところ、大慌てで産箱から飛び出し、何と野外で走りながら破水したのです。

私は焦りました。「これはまずい」と思い、タマに「戻ってこい」と声を掛けると、タマも大急ぎで小屋に戻ってきて、藁納屋に駆け込みました。

恐らくタマはこれまで経験したことのない体の中に迫りくる大きな容態の異変による不安と、破水により産箱を汚したくないという苦痛に耐えていたのだと思います。

その後、タマはしばらくパニック状態で、藁をかきむしり、巣作りをしているのか、暴れているのかわからないような感じでした。

「とにかく落ち着かせないと陣痛も来ない」と思い、私はタマをやさしく撫でて、声をかけてなだめ続けました。それでもしばらくタマは興奮状態でしたが、少しずつ落ち着き、深い眠りについてしまいました。

しばらくタマと一緒に藁納屋でとても安らかで静粛な時間(とき)を過ごしました。
そして、2~3時間過ぎた頃でしょうか...

これまでのドタバタが嘘のように、タマはすっと立ち上がり、非常に落ち着いて、いきみ始めました。

そして、それから数十分後の22時37分、
とても明るい満月の光が小屋を映し出す静かな夜に、タマはようやく待望の第一子を出産しました。

180331Malu.jpg

狭くて暗い藁納屋はとてもデリケートで、野性味の強いタマならではの自然状態に近い出産場所だったと今更ながら思う一方、タマが産箱から「出たい」という意思表示をしていたにもかかわらず、自分自身の決めつけから、出産直前のタマにそこで大きなストレスを与えてしまったことをとても後悔しています。

しかし、その後、タマと一緒に藁の上で過ごした静粛の時間と、第1子の出産の瞬間を迎えたタマとの最後の夜は一生忘れることはないでしょう。

私はこの記念すべき第1子に、リオくんとの交配と今回の出産のときに、いつもそばにあった満月にあやかり「マル」 と名付けて育てることにしたのでした。

180403Malu.jpg

次回は、この後に産まれてきた「マル」の5頭の兄弟姉妹の出産秘話と名前についてお話します。
お楽しみに!

ピッキオ・ベアドッグハンドラー
田中

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「ベアドッグ繁殖プロジェクト」は、個人や企業・団体など、
多くの皆さまのご支援により行われます。

● 東京カス環境おうえん基金
● パタゴニア環境助成金プログラム

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【ベアドッグ繁殖プロジェクト】タマ、お母さんになりました!!

みなさま

3月31日22:37、とうとうタマがお母さんになりました。

しかもリオくんとの交配のときと同じく満月が光り輝く静かな夜でした。

180403ブログ

3月29日頃から、出産を予兆する行動や体の変化があったのですが、陣痛がなかなか始まらず、結局、このタイミングとなりました。何とも月の力を感じずにはいられません(笑)

タマは3/31 22:37~4/1 12:34 の間に、合計で6頭(オス1頭、メス5頭)の赤ちゃんを産みました。

180403ブログ1

そして、1頭目を産んだ直後から、見ごとにタマの母性は開花し、今は片時も子犬たちから目を離さず、授乳と排泄の世話を一生懸命にやっています。

180403ブログ2

タマは授乳することで猛烈にお腹がすき、喉が渇くようで、これまでよりも多めのフードや水分を1日何回にも分けて補給して与えています。

子犬たちがみんなしっかりお乳を飲めているかどうか、個体によって偏りがないかを知るために、数時間おきに体重計測も行っています。

180403ブログ3

お腹いっぱいになった子犬たちはタマの周りで好き勝手な体勢で寝ています。
この姿を見ているだけで、とても幸せな気持ちになります。

180403ブログ4

それぞれの子犬たちがしばしば寝言を言うのですごく賑やかです(笑)

さあ、3週間後にはあちこち子犬たちもウロウロし始め、離乳期を迎えます。
そうなると飼育もますます大変になることでしょう。

今はタマが大忙しですが…!

私は、この束の間の至福のときを楽しみたいと思います。

幸せそうに見えるこの瞬間ですが、実は陣痛前から出産まで、出産後から今日に至るまで、いくつかの困難があり、タマと私はそれらを乗り越えてきました。

とても1回のブログでは書ききれませんので、このあとの回でお話していきます。
どうぞお楽しみに!

ピッキオ・ベアドッグハンドラー
田中

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【ベアドッグ繁殖プロジェクト】いよいよ出産のときを迎えそうです!

今日でタマは妊娠60日目。
もういつ出産があってもおかしくない時期です。

それでも人と同じで妊娠後期でも運動が必要でいつもどおりお散歩したり、天気もよいので繁殖小屋の脇を流れる小川で遊んでいます。

stream near breeding lodge

そして、とうとうタマとの2人きりの暮らしも終わりになりそうです。

タマに出産前の兆候が出てきました。犬はお産の1日ほど前から体温が約1℃急に下降し、落ち着きがなくなったり、熱くもないのに息が上がったり、巣を掘るかのようにベッドを引っ掻いたりします。
今日、タマもこれらの兆候がありました。

60days from first tie

このあと出産までの間、色々な行動や体の変化あり、様々なリスクがあることもWRBIのニルスから聞いています。今はそれらの情報を思い起こしながら、出産の瞬間(とき)を待っています。

もちろんいつ子犬たちが産まれてもよいように準備もすべて整えました

Preparation for birth

多くの皆様のご支援を受けながら、この日のために昨年の夏から準備を進めてきましたので、だいぶ気持ちが高ぶってきました。

もうすぐタマは初めての出産を迎えます。
不安そうな仕草も見せていますが、タマなら必ず元気な子犬たちを私たちに見せてくれるでしょう。

Tama in the whelping box

がんばれ!タマもう少し!

ピッキオ
ベアドッグハンドラー 田中

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● パタゴニア環境助成金プログラム

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ベアドッグ4歳の誕生日

今日でタマとナヌックは4歳になりました。
日本に来て、早2年半。タマは子犬の繁殖に向けて、ナヌックはクマの追い払いの進化に向けて頑張っています。

DSC03748.jpg

多くの方のご支援とご理解の下、日本で唯一、カレリアンベアドッグを用いたクマ対策に誇りをもって、今後も活動していきたいと思います。

今後ともよろしくお願いします。

大嶋&ナヌック

【ベアドッグ繁殖プロジェクト】タマの妊娠が確認されました!!

2月6日、ニルスさんとリオはアラスカへと戻っていきました。
賑やかだった日々から一転、再び繁殖小屋は静けさに包まれています。

タマはリオのことが恋しかったようで、彼らが去った数日間はリオがマーキングした匂いを何度も確認したり、藁納屋でリオが寝ていたところでずっと寝ていました。

タマ、藁納屋で

そして、時が経つのは早いもので、リオとタマの感動的な交配からはや1ヶ月が経とうとしています。

犬の妊娠期間はたったの2ヶ月間ですので、すでにその半分を経過したことになります。

私はこの間、不安でたまらない日々を送ってきました。

なぜなら妊娠すると食欲不振になったり、吐き戻りたりと、人間と同じようなつわり症状をもつ犬もいると聞いていたのですが、タマはまったくそんな症状もなくすごく元気だったからです。

毎日、タマのお腹を擦りながら、「大丈夫、大丈夫、ちゃんと妊娠しているからな~」と声をかけつつ、タマと合わせて、自分自身もなだめていました。

そして、昨日2月26日は、交配後1ヶ月で行うエコー診断の日。
この検診で妊娠できたかどうかが確実にわかります。

夕方、タマとかかりつけの動物病院に行きました。

先生がモニターを見ながら、「これは膀胱で、その隣にいるはずだけど…、どこかな~。あっいますね!最低でも2頭見えますよ!!」

エコー診断(軽)

私は嬉しさと安堵感でタマを抱きしめ、「よしっ!」と声を上げてしまいました。

エコー診断では、投影できる範囲が狭いので、胎児の頭数を正確に把握することはできませんが、何はともあれ、まずはひと安心というところです。胎児はまたピンポン玉サイズですが、このあとは日々大きくなり、1ヶ月後には生まれてくる予定です。

静かな繁殖小屋でのタマとの暮らしも、1ヶ月後には仔犬たちの鳴き声に包まれた賑やかな暮らしになることでしょう。しかし、これがタマと2人だけで暮らす最後の1ヶ月になるかもしれないと思うと、今、この瞬間がたまらなく愛おしくなってきます。

たまがママに!

今朝もいつもと変わらず小屋の前で佇むタマですが、その姿を眺めていると、何となく母としての落ち着きと風格が出てきているような気がしました。

生まれてくる子供たちに思いを馳せながら、改めてタマに「おめでとう」と声をかけつつも、出産までの日々をタマと精一杯楽しみたいと思った朝でした。

ピッキオ
ベアドッグハンドラー 田中



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