タマ、ヒグマの王国へ行く!~PartⅠ~
先月末から今月始めにかけて、タマと北海道斜里町・知床国立公園に行ってきました。
その時の模様を2回に分けてレポートします。
知床は、私自身が今から19年前にクマ保護管理の仕事をスタートさせたところで、第二の故郷みたいな場所です。
さて、知床国立公園と言えば、日本一のヒグマの生息地。
2005年に世界自然遺産として登録されたことでも有名です。もちろん世界自然遺産ともなれば、人の利用と自然の保全の両立を目指した自然科学的な裏付けに基づいたヒグマ保護管理が行われています。
しかし、近年、人の存在を恐れず避けないヒグマが増え、公園利用者とヒグマの遭遇や住民の生活圏への出没が日常的に発生するようになっており、このままでは知床での人とヒグマとの軋轢が増え続け、人的被害も懸念されています。
そこで、今回、私とタマが知床に行った目的は2つ。
一つ目は「地元の方々への講演会」、
二つ目は「現地でヒグマ保護管理に従事する方々へのベアドッグ育成や活動の紹介」
です。
まずは飛行機がひと苦労。
アメリカならタマは職業犬扱いとなり、飛行機の客室に乗れるのですが、
国内は通常通り・・・。

犬と一緒に移動するとなると、荷物も多く、なかなか大変です。
到着したその夜には、早速、一般向けに軽井沢でのクマとの棲み分けの取り組みを講演しました。
知床博物館で開催されました。

当日は日本ハムファイターズのリーグ優勝がかかるという道民の皆さまには大切な夜!?で、聴講者がいるのか心配でしたが、斜里町長様や教育長様を始め、会場には60名を超える皆さまがご参加くださいました。
質問もベアドッグに関するものが多かったですし、タマが参加することも告知されていましたので、これもまたベアドッグ効果だったのかもしれません(笑)。
長旅の疲れか、講演中の半分くらいは私の横で寝ていました。

次に、知床財団を訪問し、ベアドッグ活動のことやその育成、軋轢現場の視察、タマを用いたデモンストレーションを行いました。
以前、知床財団でも北海道犬を使ったクマ対策を実施されておられたようですが、犬の選別や訓練をしっかり行えていなかったようで、人やクマに対して安定した仕事ができなかったようです。
まずは、軽井沢でのベアドッグ活動はもちろんのですが、
プロのベアドッグとはどのようなものか?
人には優しく、クマには厳しくというメリハリをもち、安定した仕事をするベアドッグを育てるには何が必要か?
等々を、講義させていただきました。
しかし、百聞は一見にしかず。
いつものしつけや実践に向けた訓練も見てもらいました。
今回はその一部をご紹介。
まずは基本的なコマンドコントロール。
来い(Come)!
これはいちばん重要なコマンド。

障害物に登ったり(Up,Up)、待たせたり(Wait)。

タマはいつものようにキビキビとコマンドに従います。
次に、オフリッシュ(手綱なし)で、ベアパーツ(クマの体の一部)を探し出す訓練。
ベアパーツまでの間に、クマの匂いが地面や草に少しずつ付いています。
今回は非常に難しいシチュエーションでした。
近く(ベアパーツから約6~70m)に、シカの群れがいました。
しっかりとクマへの欲付け、ハンドラーのコマンドコントロールが効かないと、ベアパーツまで到達できない可能性があります。
しかし、これまでタマと一緒に何度も訓練を積んできたので、
タマを信頼して、オフリッシュ!!
周辺を確認しろ!(Check it Out)

タマの表情や動き、風向きを考慮しながら、
次々とコマンドを出します。
これがハンドラーの腕の見せどころ。
タマは一度立ち止まり、シカの方を気にしつつ、私の方を見ます。
「タマ、違うよ。お前はクマを探せ!(Find the bear)」と命令。

再び仕事に集中し、見ごとにベアパーツを発見(Good Find)。

財団職員の皆さんからも歓声があがりました。
難しいシチュエーションだったからこそ、訓練を受けたベアドッグの能力をより実感して頂けたと思います。

「よくやった!(Good Job the bear)」
見学していた知床財団のクマチームの皆さんにも一緒に褒めてもらいました。
シカが歩いていた時は心配しましたが、ひと安心。
タマ、ほんとうによくやった!
続きは次回のお楽しみ…
【謝辞】
ブログ中の写真は知床財団職員の皆さんが撮影してくださいました。
ありがとうございます!
ベアドッグハンドラー田中&タマ
その時の模様を2回に分けてレポートします。
知床は、私自身が今から19年前にクマ保護管理の仕事をスタートさせたところで、第二の故郷みたいな場所です。
さて、知床国立公園と言えば、日本一のヒグマの生息地。
2005年に世界自然遺産として登録されたことでも有名です。もちろん世界自然遺産ともなれば、人の利用と自然の保全の両立を目指した自然科学的な裏付けに基づいたヒグマ保護管理が行われています。
しかし、近年、人の存在を恐れず避けないヒグマが増え、公園利用者とヒグマの遭遇や住民の生活圏への出没が日常的に発生するようになっており、このままでは知床での人とヒグマとの軋轢が増え続け、人的被害も懸念されています。
そこで、今回、私とタマが知床に行った目的は2つ。
一つ目は「地元の方々への講演会」、
二つ目は「現地でヒグマ保護管理に従事する方々へのベアドッグ育成や活動の紹介」
です。
まずは飛行機がひと苦労。
アメリカならタマは職業犬扱いとなり、飛行機の客室に乗れるのですが、
国内は通常通り・・・。

犬と一緒に移動するとなると、荷物も多く、なかなか大変です。
到着したその夜には、早速、一般向けに軽井沢でのクマとの棲み分けの取り組みを講演しました。
知床博物館で開催されました。

当日は日本ハムファイターズのリーグ優勝がかかるという道民の皆さまには大切な夜!?で、聴講者がいるのか心配でしたが、斜里町長様や教育長様を始め、会場には60名を超える皆さまがご参加くださいました。
質問もベアドッグに関するものが多かったですし、タマが参加することも告知されていましたので、これもまたベアドッグ効果だったのかもしれません(笑)。
長旅の疲れか、講演中の半分くらいは私の横で寝ていました。

次に、知床財団を訪問し、ベアドッグ活動のことやその育成、軋轢現場の視察、タマを用いたデモンストレーションを行いました。
以前、知床財団でも北海道犬を使ったクマ対策を実施されておられたようですが、犬の選別や訓練をしっかり行えていなかったようで、人やクマに対して安定した仕事ができなかったようです。
まずは、軽井沢でのベアドッグ活動はもちろんのですが、
プロのベアドッグとはどのようなものか?
人には優しく、クマには厳しくというメリハリをもち、安定した仕事をするベアドッグを育てるには何が必要か?
等々を、講義させていただきました。
しかし、百聞は一見にしかず。
いつものしつけや実践に向けた訓練も見てもらいました。
今回はその一部をご紹介。
まずは基本的なコマンドコントロール。
来い(Come)!
これはいちばん重要なコマンド。

障害物に登ったり(Up,Up)、待たせたり(Wait)。

タマはいつものようにキビキビとコマンドに従います。
次に、オフリッシュ(手綱なし)で、ベアパーツ(クマの体の一部)を探し出す訓練。
ベアパーツまでの間に、クマの匂いが地面や草に少しずつ付いています。
今回は非常に難しいシチュエーションでした。
近く(ベアパーツから約6~70m)に、シカの群れがいました。
しっかりとクマへの欲付け、ハンドラーのコマンドコントロールが効かないと、ベアパーツまで到達できない可能性があります。
しかし、これまでタマと一緒に何度も訓練を積んできたので、
タマを信頼して、オフリッシュ!!
周辺を確認しろ!(Check it Out)

タマの表情や動き、風向きを考慮しながら、
次々とコマンドを出します。
これがハンドラーの腕の見せどころ。
タマは一度立ち止まり、シカの方を気にしつつ、私の方を見ます。
「タマ、違うよ。お前はクマを探せ!(Find the bear)」と命令。

再び仕事に集中し、見ごとにベアパーツを発見(Good Find)。

財団職員の皆さんからも歓声があがりました。
難しいシチュエーションだったからこそ、訓練を受けたベアドッグの能力をより実感して頂けたと思います。

「よくやった!(Good Job the bear)」
見学していた知床財団のクマチームの皆さんにも一緒に褒めてもらいました。
シカが歩いていた時は心配しましたが、ひと安心。
タマ、ほんとうによくやった!
続きは次回のお楽しみ…
【謝辞】
ブログ中の写真は知床財団職員の皆さんが撮影してくださいました。
ありがとうございます!
ベアドッグハンドラー田中&タマ
スポンサーサイト
ご来場ありがとうございました
11月12日(土)の「真田のクマを語る集い」には、真田地域の内外から約100名の方がいらっしゃいました。
ご来場、ありがとうございました。

長野大学環境ツーリズム学部の高橋一秋先生による基調講演「私たちが自然環境から受けている生態系サービス」に続き、真田町猟友会長の佐藤五郎さん、信州ツキノワグマ研究会の浜口あかりさんをパネラーに迎えて、パネルディスカッションを行いました。
狩猟について、防除について、普及啓発について、追跡調査について・・・
クマと共存するための具体的なヒントが出てきました。

お昼からは、佐藤猟友会長とやまぼうし自然学校さんの合作となる熊汁をおいしくいただきました。
シカの角などを使ったクラフト体験コーナーもあり、真田地域の自然のめぐみを体感していただけたのではないかと思います。

長野県PRキャラクター「アルクマ」も登場し、子どもたちは大喜び。
そして、我らがベアドッグ「タマ」とハンドラーの田中も会場に駆けつけました。

クマや真田地域の自然、そこに携わる方々の魅力を再発見する一日となりました。
クマと折り合いをつけるためのとりくみを後押しする力になれば、主催者としてこの上なく嬉しいです。
最後になりましたが、イベントの準備や運営を手伝っていただいたボランティアの皆様、本当にありがとうございました。
この場をお借りして御礼を申し上げます。
*このイベントは『長野県地域発元気づくり支援金』の助成を受けて実施しました。
ピッキオ 玉谷
ご来場、ありがとうございました。

長野大学環境ツーリズム学部の高橋一秋先生による基調講演「私たちが自然環境から受けている生態系サービス」に続き、真田町猟友会長の佐藤五郎さん、信州ツキノワグマ研究会の浜口あかりさんをパネラーに迎えて、パネルディスカッションを行いました。
狩猟について、防除について、普及啓発について、追跡調査について・・・
クマと共存するための具体的なヒントが出てきました。

お昼からは、佐藤猟友会長とやまぼうし自然学校さんの合作となる熊汁をおいしくいただきました。
シカの角などを使ったクラフト体験コーナーもあり、真田地域の自然のめぐみを体感していただけたのではないかと思います。

長野県PRキャラクター「アルクマ」も登場し、子どもたちは大喜び。
そして、我らがベアドッグ「タマ」とハンドラーの田中も会場に駆けつけました。

クマや真田地域の自然、そこに携わる方々の魅力を再発見する一日となりました。
クマと折り合いをつけるためのとりくみを後押しする力になれば、主催者としてこの上なく嬉しいです。
最後になりましたが、イベントの準備や運営を手伝っていただいたボランティアの皆様、本当にありがとうございました。
この場をお借りして御礼を申し上げます。
*このイベントは『長野県地域発元気づくり支援金』の助成を受けて実施しました。
ピッキオ 玉谷
「どんぐり返し」の日
11月に入り、軽井沢の紅葉はピークを迎えました。

カラマツの黄色もきれいですね。

一昨日には浅間山にうっすらと雪が積もりました。
平年より4日遅い初冠雪だったそうです。

今日、11月3日は、軽井沢町で20年以上続く「どんぐり返し」の日です。
地元の小学生が拾い集めたどんぐりを苗畑にまきます。
育った苗木は山に植えられ、生き物を育む、災害に強い森になります。

陽光とカラマツの葉が降り注ぐ空の下、気持ちよくどんぐりをまくことができました。

イノシシなどの野生動物に食べられないように、畑を電気柵で囲います。
長い杭を打ち込むのは熟練の技。不安定な脚立の上で、体の軸がまったくぶれません。

でも、近くに寄って写真を撮ろうとすると、銅像のように固まってしまわれるのでした。

週末も天気が安定しているようです。
終盤の紅葉を見に、軽井沢へお越しください。
玉谷

カラマツの黄色もきれいですね。

一昨日には浅間山にうっすらと雪が積もりました。
平年より4日遅い初冠雪だったそうです。

今日、11月3日は、軽井沢町で20年以上続く「どんぐり返し」の日です。
地元の小学生が拾い集めたどんぐりを苗畑にまきます。
育った苗木は山に植えられ、生き物を育む、災害に強い森になります。

陽光とカラマツの葉が降り注ぐ空の下、気持ちよくどんぐりをまくことができました。

イノシシなどの野生動物に食べられないように、畑を電気柵で囲います。
長い杭を打ち込むのは熟練の技。不安定な脚立の上で、体の軸がまったくぶれません。

でも、近くに寄って写真を撮ろうとすると、銅像のように固まってしまわれるのでした。

週末も天気が安定しているようです。
終盤の紅葉を見に、軽井沢へお越しください。
玉谷
| HOME |