離山
軽井沢町には離山(はなれやま)と呼ばれる標高1,255mの山があります。
山と言っても山すその標高が約1,000mなので、丘のようなものですが、他の山から離れてそびえ立っており、存在感はかなりのものです。

写真:夏の離山(左)と浅間山
定本 浅間山(郷土出版社)によると、離山は今から2~1万年前ごろに溶岩が盛り上がってできたそうです。
東西南北が約1kmで、平らな頂上が500m四方を占めるという、プリンのような形をしており、急斜面の岩場と落葉広葉樹林、緩斜面のカラマツ林、頂上付近の草地と変化に富んだ環境がみられます。
周辺は住宅地や別荘地に囲まれているので、野生動物たちにとって、離山は「出島」のような存在になっているものと思われます。
頂上に登ると、数回に一度はカモシカに遭うことができます。
不思議なもので、視線は感じるものですね。
誰かに見られているような気がして顔を向けると、こちらを観察しているカモシカと目が合うのは偶然ではないような気がします。

離山の南斜面には岩場があります。
その昔、山賊が住んでいたという「隠れ里」のほか、岩穴がいくつもあり、クマが冬眠することもあります。
南斜面からは市街地や国道18号線、新幹線が近くに見えて、町の音も聞こえます。
クマはそんなところで、誰にも知られることなく、ひっそりと冬を越しているのです。
彼らのたくましさと慎ましさには感心します。
でも、こうしたところで誕生した子グマは、神経が太くなるかもしれません。
親子が住宅地に出るのには5分とかからないでしょう。
彼らの領域と人間の領域の近さに、身が引き締まる思いもします。

離山は誰のもの・・・?
この山は、軽井沢の人と野生動物の関係を象徴しているように思います。
玉谷
山と言っても山すその標高が約1,000mなので、丘のようなものですが、他の山から離れてそびえ立っており、存在感はかなりのものです。

写真:夏の離山(左)と浅間山
定本 浅間山(郷土出版社)によると、離山は今から2~1万年前ごろに溶岩が盛り上がってできたそうです。
東西南北が約1kmで、平らな頂上が500m四方を占めるという、プリンのような形をしており、急斜面の岩場と落葉広葉樹林、緩斜面のカラマツ林、頂上付近の草地と変化に富んだ環境がみられます。
周辺は住宅地や別荘地に囲まれているので、野生動物たちにとって、離山は「出島」のような存在になっているものと思われます。
頂上に登ると、数回に一度はカモシカに遭うことができます。
不思議なもので、視線は感じるものですね。
誰かに見られているような気がして顔を向けると、こちらを観察しているカモシカと目が合うのは偶然ではないような気がします。

離山の南斜面には岩場があります。
その昔、山賊が住んでいたという「隠れ里」のほか、岩穴がいくつもあり、クマが冬眠することもあります。
南斜面からは市街地や国道18号線、新幹線が近くに見えて、町の音も聞こえます。
クマはそんなところで、誰にも知られることなく、ひっそりと冬を越しているのです。
彼らのたくましさと慎ましさには感心します。
でも、こうしたところで誕生した子グマは、神経が太くなるかもしれません。
親子が住宅地に出るのには5分とかからないでしょう。
彼らの領域と人間の領域の近さに、身が引き締まる思いもします。

離山は誰のもの・・・?
この山は、軽井沢の人と野生動物の関係を象徴しているように思います。
玉谷
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3頭目も無事に回収できました
前回お伝えしたGPSロウドクに続き、今日はGPSトメブの首輪を回収することができましたのでご報告いたします。
GPSトメブは軽井沢町と群馬県安中市との境にある留夫山(1591m)の近くで、2012年6月16日に捕獲された4~5才のオスグマです。
電波を頼りに群馬県の霧積方面へ下りていきました。

映画「人間の証明」の舞台となった霧積の山は、岩ありササやぶありで、人の侵入を拒んでいるようです。

その分、野生動物の気配は濃厚で、途中のヒノキ林では何本もの木が「クマハギ」されていました。

クマハギとはクマが樹皮をめくって木部をかじる行動で、軽井沢町周辺ではヒノキのほか、スギやカラマツの人工林で被害が発生しています。
イヌブナの幹に残った、クマの爪跡です。

かなり大きなクマではないかと思われます。
ドングリを食べたクマの糞もたくさんありました。

今年はミズナラのドングリが豊作で、まだ地面に残っていました。
来年、冬眠があけてからの食べ物があるので、クマたちは安心して寝ることができると思います。
さて、GPS首輪ですが、今回はササやぶの中に落ちていました。
先日のロウドクと同じく、寝床で首輪が外れたようです。
自分がクマでも確かにここを選ぶなあ、と思うような、日の当たる気持ちのよい場所でした。

結局、本格的な積雪前に3頭全部のGPS首輪を回収することができました。
電波による位置特定作業や山を歩いての回収作業に力を貸してくださったみなさま方、本当にありがとうございました。

ピッキオ大嶋からも御礼申し上げます
玉谷
GPSトメブは軽井沢町と群馬県安中市との境にある留夫山(1591m)の近くで、2012年6月16日に捕獲された4~5才のオスグマです。
電波を頼りに群馬県の霧積方面へ下りていきました。

映画「人間の証明」の舞台となった霧積の山は、岩ありササやぶありで、人の侵入を拒んでいるようです。

その分、野生動物の気配は濃厚で、途中のヒノキ林では何本もの木が「クマハギ」されていました。

クマハギとはクマが樹皮をめくって木部をかじる行動で、軽井沢町周辺ではヒノキのほか、スギやカラマツの人工林で被害が発生しています。
イヌブナの幹に残った、クマの爪跡です。

かなり大きなクマではないかと思われます。
ドングリを食べたクマの糞もたくさんありました。

今年はミズナラのドングリが豊作で、まだ地面に残っていました。
来年、冬眠があけてからの食べ物があるので、クマたちは安心して寝ることができると思います。
さて、GPS首輪ですが、今回はササやぶの中に落ちていました。
先日のロウドクと同じく、寝床で首輪が外れたようです。
自分がクマでも確かにここを選ぶなあ、と思うような、日の当たる気持ちのよい場所でした。

結局、本格的な積雪前に3頭全部のGPS首輪を回収することができました。
電波による位置特定作業や山を歩いての回収作業に力を貸してくださったみなさま方、本当にありがとうございました。

ピッキオ大嶋からも御礼申し上げます
玉谷
四度目の正直
三井物産環境基金によるQUMAプロジェクトも最終年度となる3年目の終盤を迎えました。
クマの体毛から遺伝子を解析するヘアトラップ調査、センサーカメラによる出産確認と並んで、プロジェクトの大きな軸となっていたのがGPSによるオスグマの行動追跡調査でした。
GPSは本体に位置データが蓄積されていくため、脱落させて、回収しなければなりません。
装着した3頭のうち、1頭のGPSはすでに回収し、残りの2頭については12月1日にタイマーで首輪を脱落させることにしていました。
今回、首輪の回収に挑むのは、2012年6月29日に浅間山麓で捕獲したオスグマです。
このオスは推定4才の若グマで、軽井沢朗読館の裏山で捕獲されたので、「ロウドク」と名づけていました。

美しい「月の輪」を持つクマでした。

さて、脱落したGPS首輪は電波を頼りに探します。
首輪の位置を仮定し、周辺の地形の影響などを考えながら歩き回り、場所を絞り込んでいきます。

装着期間が後半になると、電池の電圧が下がってきたためか、電波の出力が弱くなったり、周波数が変わったりしました。
もしかすると、タイマー式の脱落装置がうまく作動していないかもしれない、という不安も心をよぎりました。
今日は本格的に首輪の探索をはじめて4日目です。
ボランティアで駆けつけてくれた岡田さんと、田中、玉谷で浅間山を登りました。
霧が晴れていき、青空に霧氷の白さが映えます。

振り返ると、雲海の上に八ヶ岳が見えました。

気温はおそらく氷点下ですが、風がないので、陽だまりでは暖かく感じます。
腹ごしらえをしてから、可能性が残された範囲へ突入しました。

・・・と、ありました。
4日目の今日は、あっけなく首輪に到達できました。

標高1950mの樹林帯の最上部。折った枝が集まり、大きな鳥の巣のようになっているところに落ちていました。
脱落装置のタイマーが正確なら、朝の7時に首輪が外れたはずです。
朝の光の中でうとうとしていたロウドクを、びっくりさせてしまったかもしれません。

ドングリをつける木々はこの標高にありません。
それでも、ここを利用しているのですね。
GPSには4時間おきのロウドクの位置情報が詰まっています。
これから事務所のパソコンにつないでみるのが楽しみです。

玉谷
クマの体毛から遺伝子を解析するヘアトラップ調査、センサーカメラによる出産確認と並んで、プロジェクトの大きな軸となっていたのがGPSによるオスグマの行動追跡調査でした。
GPSは本体に位置データが蓄積されていくため、脱落させて、回収しなければなりません。
装着した3頭のうち、1頭のGPSはすでに回収し、残りの2頭については12月1日にタイマーで首輪を脱落させることにしていました。
今回、首輪の回収に挑むのは、2012年6月29日に浅間山麓で捕獲したオスグマです。
このオスは推定4才の若グマで、軽井沢朗読館の裏山で捕獲されたので、「ロウドク」と名づけていました。

美しい「月の輪」を持つクマでした。

さて、脱落したGPS首輪は電波を頼りに探します。
首輪の位置を仮定し、周辺の地形の影響などを考えながら歩き回り、場所を絞り込んでいきます。

装着期間が後半になると、電池の電圧が下がってきたためか、電波の出力が弱くなったり、周波数が変わったりしました。
もしかすると、タイマー式の脱落装置がうまく作動していないかもしれない、という不安も心をよぎりました。
今日は本格的に首輪の探索をはじめて4日目です。
ボランティアで駆けつけてくれた岡田さんと、田中、玉谷で浅間山を登りました。
霧が晴れていき、青空に霧氷の白さが映えます。

振り返ると、雲海の上に八ヶ岳が見えました。

気温はおそらく氷点下ですが、風がないので、陽だまりでは暖かく感じます。
腹ごしらえをしてから、可能性が残された範囲へ突入しました。

・・・と、ありました。
4日目の今日は、あっけなく首輪に到達できました。

標高1950mの樹林帯の最上部。折った枝が集まり、大きな鳥の巣のようになっているところに落ちていました。
脱落装置のタイマーが正確なら、朝の7時に首輪が外れたはずです。
朝の光の中でうとうとしていたロウドクを、びっくりさせてしまったかもしれません。

ドングリをつける木々はこの標高にありません。
それでも、ここを利用しているのですね。
GPSには4時間おきのロウドクの位置情報が詰まっています。
これから事務所のパソコンにつないでみるのが楽しみです。

玉谷
冬の間にしておきたいこと
こんにちは。玉谷です。
軽井沢では木々の葉が散り、冬を迎える準備が整いました。
この先、雪に覆われてしまうことを思うと、陽だまりの落ち葉がいっそう暖かく感じますね。
最近は、発信器を付けたクマが冬ごもりを始めたかどうかを知るために、アンテナを持って電波の受信を試みています。
しかし、浅間山には旧噴火口の大きな窪地があります。
クマがそこにいると、山麓では電波を受信できません。
今日は、行方不明のクマを探しに、外輪山に登ってみました。

八ヶ岳との間にある佐久盆地の雲海が晴れてきたところです。
トーミの頭で受信機の周波数を11歳のメスグマに合わせると、「ピッ、ピッ」と音が鳴りました。
アンテナの延長線上の崖にいるようです。

このクマは住宅地のそばで生活しており、金網フェンスを越えて水源地に入ったり、イノシシのわなで捕まってしまったりと、人間から近い場所にいることがあります。
しかし、昨年も一昨年も秋の終わりになると、ふっといなくなり、不思議だなあと追跡してみると、旧噴火口まで登って冬ごもりをしているのでした。
今年は11月18日に小学校の裏山で確認されて以来、行方不明になっていました。
小学校の裏から目の前の崖までは直線距離で8km、1000mの標高差があります。
私からすれば二つの場所はまったく違う環境で、この場所で再会する(電波を受信する)のはやはり意外な感じがするものでした。
しかし、このクマにとっては季節によって使う場所を選んでいるだけのことで、発信器を付けるまでもきっと同じように過ごしてきたのでしょう。
夏の間はともすると、問題個体か否か、という人間寄りの基準でクマを見がちで、私が意外な感じを受けたのは、それにとらわれているからではないかと反省しました。
冬の間は雪の山で春を待つ彼らの存在をそのまま感じよう。
そうして、目線の偏りを正しておこう。
このように思いました。

玉谷
軽井沢では木々の葉が散り、冬を迎える準備が整いました。
この先、雪に覆われてしまうことを思うと、陽だまりの落ち葉がいっそう暖かく感じますね。
最近は、発信器を付けたクマが冬ごもりを始めたかどうかを知るために、アンテナを持って電波の受信を試みています。
しかし、浅間山には旧噴火口の大きな窪地があります。
クマがそこにいると、山麓では電波を受信できません。
今日は、行方不明のクマを探しに、外輪山に登ってみました。

八ヶ岳との間にある佐久盆地の雲海が晴れてきたところです。
トーミの頭で受信機の周波数を11歳のメスグマに合わせると、「ピッ、ピッ」と音が鳴りました。
アンテナの延長線上の崖にいるようです。

このクマは住宅地のそばで生活しており、金網フェンスを越えて水源地に入ったり、イノシシのわなで捕まってしまったりと、人間から近い場所にいることがあります。
しかし、昨年も一昨年も秋の終わりになると、ふっといなくなり、不思議だなあと追跡してみると、旧噴火口まで登って冬ごもりをしているのでした。
今年は11月18日に小学校の裏山で確認されて以来、行方不明になっていました。
小学校の裏から目の前の崖までは直線距離で8km、1000mの標高差があります。
私からすれば二つの場所はまったく違う環境で、この場所で再会する(電波を受信する)のはやはり意外な感じがするものでした。
しかし、このクマにとっては季節によって使う場所を選んでいるだけのことで、発信器を付けるまでもきっと同じように過ごしてきたのでしょう。
夏の間はともすると、問題個体か否か、という人間寄りの基準でクマを見がちで、私が意外な感じを受けたのは、それにとらわれているからではないかと反省しました。
冬の間は雪の山で春を待つ彼らの存在をそのまま感じよう。
そうして、目線の偏りを正しておこう。
このように思いました。

玉谷
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