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クマを一番近くで感じる季節

絶好の調査日和

青空を見上げながら、林道を詰めていきます。
クマに会うには絶好の日和です。

春の広葉樹林

スギの林が終わり、萌黄色の広葉樹林の林になりました。
人間の世界から野生の世界へ「お邪魔します」。

ヴィエンテ冬眠穴

メスグマ「ヴィエンテ」の冬眠穴は急斜面の中ほどにありました。

雪がなくなり、歩きやすくなった山では、穴の中で新緑が広がるのを待っているクマの気配を間近に感じることができます。
この時期だけの楽しみです。

ハヤブサの砦

目の前の絶壁ではカモシカが声を上げ、上空をハヤブサが旋回しています。

・・・

夕焼けの浅間山

春の一日はこうして過ぎていきます。

  玉谷
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追跡中のオスグマ、すべて目覚めました!

現在、電波発信器による行動追跡が可能な個体は11頭。
そのうちの3頭がオス、残る8頭がメスです。

その3頭のオスグマ全てが冬眠から目覚め、活動を開始しました。
クマの活動シーズン到来です。

やはりオスグマの目覚めは一番早いですね。

前回の記事に出てきたミソ(9歳)は4月14日~17日の間、サンゴ(10歳)という個体は、昨年11月18日以来、その電波をキャッチできませんでしたが、4月13日に突然電波をキャッチできました。おそらく電波が飛びにくい、深い谷の深い穴にでもこもっていたのでしょう。イチロー(7歳)は4月19日に冬眠穴から出たようです。

ミソが冬眠からさめた後に移動したと思われる場所に朽ち木の切り崩しがありました。

蟻はいた?

活動は始めたものの。この時期、林の中は芽吹きが少ないです。
おそらく昨年落ちたドングリの実や、僅かに出始めた芽吹きを探してうろうろしているのでしょう。

そのままミソが歩いたと思われるルート(足跡)をたどって行くと、

斜面一面のアズマイチゲの群落にたどり着きました。
霧が出ていたので、残念ながら花は閉じていましたが見事でした!
ミソ、ありがとう。

アズマイチゲ1

と、そのままはっと空を見上げると、昨年の秋にできたクマ棚だらけの空間。

クマ座布団

なんとも幻想的で、刺激的なひと時でした。
このようにクマが歩いた場所をたどっていくと、町内の別荘地脇の森の中や沢沿いに思いもよらない奇麗な湿地やお花畑、奇麗なせせらぎと出会うことがしばしばあります。

クマは豊かな自然が残る場所を良く知っています。
軽井沢にクマが出る原因として「ゴミ」が取りざたされますが、実際には町内にある豊かな自然を求めて行動していることを実感します。

さあ、オスグマもすべて目覚めたぞ! 気を引きしめて、我々のシーズンも到来!

ということで、まずは野鳥の森の遊歩道入り口に、クマへの対処法を記した看板(通称クマ看板)を設置しました。

看板

ピッキオビジターセンターでは、野鳥の森の中での最新のクマ情報も得られますので、お越しの際はどうぞお立ち寄り下さい。

田中

オスグマ「ミソ」の生き方に学ぶ

群馬県嬬恋村の溶岩樹形で冬眠していたかもしれないオスグマ「ミソ」(8才)ですが、18日に軽井沢町の森で確認されました。
両地点は直線距離で10km離れています。

オスグマの行動範囲は広く、「ミソ」の場合は軽井沢町を中心にして、西は小諸市、東は高崎市、北は嬬恋村に及びます。
南北10km以上、東西20km以上の範囲を生活エリアとしているようです。

ただし、その中をまんべんなく使っているわけではなく、季節ごとにお気に入りの場所があるようです。
少なくとも、夏を過ごす場所、冬眠前の食いだめをする場所、そして冬眠場所には彼なりのこだわりがあるように感じます。
そして、これから初夏にかけては、軽井沢の森に滞在するのではないかと予想しています。

山菜を求めて標高の低い(それでも1000mありますが)場所へ下りてくるのでしょうか。
メスグマとの出会いを期待しているのでしょうか・・・。

春の陽射し

ところで、山菜といえば、下の写真の植物をご覧になられたことはあるでしょうか。
今、軽井沢の森でたくさん見られます。

ハシリドコロ

一見するとおいしそうですが、実は猛毒を持つ「ハシリドコロ」です。
食べると苦しみのあまり走り回ってしまうほどだそうです。
野生動物に食べられていない植物は要注意ですね。

  玉谷

活火山とクマ

ヤナギと浅間山

18日の浅間山です。
この写真は群馬県高崎市の西端、旧倉渕村の二度上峠で撮影しました。
標高1390mのここでも、ヤナギの芽が膨らみ始めました。

ところで、浅間山の北側には溶岩流が固まってできた、鬼押出という観光地があります。
オスのツキノワグマ「ミソ」は2005~2006年、2008~2009年の冬、鬼押出の近くで冬眠しました。
(2006年夏から2008年春までは発信器が外れており、確認できた2冬のうち2回とも、この場所で冬眠したことになります。)

この場所には国の天然記念物に指定されている「溶岩樹形の森」があります。
「定本浅間山 郷土出版社」によると、溶岩樹形について以下のように説明されています。

~今より約200年前の天明3年(1783)の噴火は、5月9日にはじまり8月まで噴煙活動が続いた。8月4日の夕刻に大爆発が発生し、釜口北側からのちに吾妻火砕流と呼ばれる溶岩が流下した。高温の溶岩に襲われた山麓の森はたちまち炎上したが、溶岩に取り囲まれた樹形の輪郭だけが残った。その後、樹は腐って円筒状の樹形が井戸のように残り、当時の災害の痕跡と森のようすを今に伝えている。昭和50年の調査によると溶岩樹形は500個を数え、大きさは直径50センチから200センチとさまざまで、深さも3メートルあるものから最長は7メートルのものまでと記録が残っている。このことから、主にミズナラなどの大木を中心に、さまざまな種類の木で構成されていた豊か森が想像できる。~

電波の受信状況からすると、ミソはこの溶岩樹形の穴の中で冬ごもりしていたのではないかと想像されます。
大噴火する前の豊かな森では、ミソの先祖たちが食事をしていたのでしょうが、今は冬眠の場所になっている・・・。

天明の大噴火の前には山からクマが下りてきたとのことですが、今年2月の小噴火では動きませんでした。
クマ達には危険を予知する能力があるのでしょうか・・・。

浅間山とツキノワグマ、この畏れ多い自然を近くに感じられるのは、つくづく素晴らしいと思います。

・・・「ミソ」の話をしていたのでした。
13日にはこの場所で電波を受信したため、穴を確認しようと思っていたのですが、18日は既に穴から出ていました。
北軽井沢は標高が高く、春の訪れが遅いので、まだ大丈夫だろうと思っていたのですが、やはりオスグマは目覚めるのが早かったです。
残念!

  玉谷

感謝

なんと!
今日、美弥子の出産祝いをいただきました。
 ※美弥子については4月11日のブログをご覧ください。

本当にありがとうございます!

美弥子とその子どもたちが、ゴミやトウモロコシの味を覚えないように、
将来にわたって、自然のものを食べて暮らせる森を残せるように、
有効に使わせていただきます。


軽井沢で捕獲されたツキノワグマの最長老は22歳。
美弥子は今年17歳。
 (クマにとってはけっこうなお年ですね。)

今年生まれた子どもたちが22歳まで生きるためには、

軽井沢はこの先、どうなっていたらいいのでしょう。

何をかえて、何を残していったらいいのでしょう。

22年後・・・どうなっているのでしょう。


この手で寿命を終わらせなければならない、
そんなことには、どうか、なりませんように。

いや、させないように、がんばります。

上池久美子(旧姓:大江)



クマを捕まえる準備 ~罠のメンテナンス~

追跡中のクマが冬眠からさめ始めるこの季節。
軽井沢周辺のクマの動きを把握する行動追跡はもちろんのこと、それと同時に行う仕事。

それは、クマを捕獲するための罠のメンテナンスです。

これが意外に力仕事で大仕事。
私たちは、クマを捕獲する罠を15基所有しているのですが、その収蔵と管理は大変。
それらを雨風に当て続けると、すぐに錆び付いてしまいます。

とは言っても、15基の罠を保管する場所なんてなかなかなく、
私たちは、畳4畳半ほどの空き別荘の土間をお借りして、罠を立てて保管しています。

檻収納場

このスペースに15基の罠を収納するのは職人技。

修繕箇所確認

錆や穴など、修繕が必要な檻を確認しながら運び出す。

檻運び出し

これらの作業は大変ですが、毎年、しっかりメンテナンスすれば、長く使えますし、捕獲作業も安全かつスムーズに行えます。

これはクマを放獣する際に取り付ける扉開閉用パーツを取り付ける部分の錆を落としているところ。

錆び落とし#9313;

事前に開閉用パーツの取り付け具合を確認し修繕しておかないと、クマの放獣現場で作業の流れを見出し、安全な作業に支障をきたすこともるので、作業と調整は怠りません。

リリースバー取り付け

これ以外にも、

・罠本体の錆び落しと錆び止めペンキの塗布
・連結部分のネジの確認
・トリガーの修理

などなど、15基の罠のメンテナンス作業は1日で終わりません。

檻整列

クマを捕獲したり、追い払いをしたり、多くの方にクマの生態を伝えたり、表舞台の仕事が目立ちますが、このような地味な裏方作業あってのもの。

クマもスタッフも安全に捕獲作業が行えるようにこつことがんばってます。

あ~、クマも動き始めたので、早くしなくちゃ・・・。
でもあと2日はかかりそう。

田中

「美弥子」の冬眠穴

2007年、非常に強い風を伴った台風が軽井沢を襲い、別荘地や国有林内の木がたくさん倒れました。
その時に倒れた木をうまく利用しているクマがいます。

No.40♀「美弥子」は、倒れた木の根元をリフォームして冬眠しました。

冬眠穴全体

先日、冬眠穴をたずねたところ、クマの姿はありませんでしたが、確かに冬ごもりをしていた証拠が残っていました。

一つは穴から出たところに残されたたくさんの糞です。
中身はドングリの殻やスゲの葉でした。

スゲを食べた時の糞

それほど栄養があるとは思えないスゲの葉を食べていた理由はよくわかりません。
一回分だとは思えないほどの量の「スゲ糞」が残されていたところをみると、穴から出たり入ったりして、近場にあるもので空腹を満たしていたのかもしれません。

もう一つ、とても重要な情報を見つけました。
それは、穴の上から生えているサクラ?の幹に残された、子グマの新しい爪跡です。

子グマの爪跡

子グマは木に登って遊んでいたようです。
「美弥子」はこの冬に出産していたのですね!

さらに、穴の中を見ると、2つのくぼみがありました。

子供部屋?

もしかすると、小さい方(右側)は子供部屋でしょうか。
母グマが寝ている間に、ここで遊んでいたのかもしれませんね。

  玉谷

春二様

4月に入り、暖かい日が続いています。
身を縮こませて待っていた冬の寒さは結局来ず、やるべきことをやっていない気分が残りました。
本当に春が来てしまったの?と未だに信じられない私とは全く関係なく、季節は着実に前へ進んでいきます。

都庁と桜

この写真は、先日、JBN(日本クマネットワーク)の集まりが新宿であった時に、撮影したものです。
初めて見た東京都庁の大きさに圧倒され、さらに、桜も満開であり、おのぼりさん的に連写したうちの一枚です。

芽吹き直前

この写真は今日、軽井沢で撮りました。
海に近い街で常緑樹の林を見て育った私にとっては、初夏のような陽射しと葉のない林の取り合わせが不思議に感じます。

よく見ると、木々の芽が膨らんで枝先は赤みがかっています。
爆発するように芽吹くのはもうすぐだと思います。

  玉谷